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鳥取地方裁判所 昭和23年(行)23号 判決

主文

原告が別紙目録記載の土地につき所有権を有することを確認する。

原告のその余の請求はこれを棄却する。

訴訟費用中原告と被告国との間に生じた部分は同被告の負担としその余は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文第一項と同旨及び被告三朝村農地委員会が別紙目録記載の土地につき樹立した買収計画は無効であることを確認する訴訟費用は被告等の負担とするとの判決を求めその請求の原因として別紙目録記載の土地はもと原告の父中島辨太郎の所有であつたが同人は昭和十五年六月二十九日死亡しその長男で原告の実兄である中島祝において家督相続をしてその所有権を承継取得し次で昭和十七年三月二十日原告が右祝から譲渡を受け所有者となつたものであるところ昭和二十一年頃原告が訴外大丸義夫に右土地を無償で臨時に貸与しているうち同人を構成員とする被告農地委員会はことさら中島祝の所有土地として右土地につき買収計画を樹立し昭和二十二年十月七日から同月十七日までの間土地所有者を同人として公告をしたしかしその土地は原告の所有であること前述の通りであるから土地所有者中島祝として樹立し且つその表示をして公告をした本件買収計画は無効であり仮に然らずとしても右土地は臨時に貸与したものであるから小作地ではないのに小作地と誤認して買収計画が為されたものでこの理由によつても無効である、よつて被告三朝村農地委員会に対し右買収計画の無効を求めなおその後右買収計画に基き訴外鳥取県知事は昭和二十二年十二月二日附で本件土地につき所有者を中島祝とした買収令書を発行し昭和二十三年五月十九日これを同人に交付したけれども元来前述の通りその基本である買収計画が無効である以上当然後続の処分である知事の買収処分も無効となるのであるのみならず右知事の買収処分は買収令書の所有者である原告に交付することなく所有者でない中島祝名義で発行し且つ同人に交付したものであるからこの理由によつても無効というべきで従つて本件土地の所有権は依然として原告にあることとなるにかかわらず被告等は原告の所有権を争うから被告国に対し原告の右土地に対する所有権の存在確認を求めるため本訴請求に及んだ旨述べ被告の抗弁に対し原告が未だ所有権移転登記を経由していない事実はこれを認めるが民法第百七十七条の規定は自作農創設特別措置法に基く政府の買収に関しては適用がないと解すべきであるから原告は自己の所有権を以て政府に対抗し得る旨述べた。(立証省略)

被告三朝村農地委員会指定代理人は本案前の弁論として原告の訴を却下する訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求めその理由として農地買収計画無効確認を求める訴は国を被告とすべきもので行政庁たる被告三朝村農地委員会は被告としての適格を欠くから本訴は不適法であると述べ被告両名指定代理人は本案につき原告の請求はこれを棄却する訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め答弁として別紙目録記載の土地がもと中島弁太郎の所有であつたが同人が昭和十五年六月二十九日死亡しその長男である中島祝において家督相続をして右土地の所有権を承継取得した事実被告農地委員会において中島祝の所有土地として買収計画を樹立し原告主張の期間土地所有者を中島祝として公告をし鳥取県知事において原告主張の日その主張のような買収令書を発行しこれを中島祝に交付して買収処分をした事実はこれを認めるがその余の事実を否認する、仮に原告が中島祝から右土地を譲受けたとしても所有権移転登記を経由していないからその譲受を以て第三者たる被告三朝村農地委員会に対抗できないもので従つて同農地委員会において右土地は中島祝の所有地であるとして買収計画その他買収に関する手続を行つたもので何等違法ではない。仮にそれが違法であるとしても取消し得べきであるにとどまり当然無効となるのではないから原告の請求に応じ難いと述べた。(立証省略)

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